里子に便器の水を飲ませる里親

gladiolus2009 による 7. グラジオラスの場合 への投稿 (7. グラジオラスの場合)
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前回の『「健全な子ども」は里親宅ではトラブルメーカーになる』のつづき。

ユカちゃんはS宅にきた当初ひどく緊張して、
借りてきた猫のようにおとなしかったの。
彼女の里親に対する恐怖心、他人様の家に厄介になる気おくれ、
親もとを離れて他人の家で暮らす寂しさと心細さ──
──そういった感情が手にとるようにわかったわ。
でもそれは「彼女自身の問題」だったの。
彼女がひとりで現実と対峙し、自分の力で折り合いをつけるべきことで、
他人が気にかけたり手助けをすることではないと思ってたの。

もちろん私を含む先住里子は、あたらしい里子が入ってくると、
上っ面だけはやさしくふるまって、慣れないうちは面倒をみてあげて
その家のルールを教えてあげて、波風立てずに仲良くしてたけど、
それは「私たちの仕事」で、仕事をなまけると里親に殴られるからよ。
その子のことを気にかけて思いやってるからではなかったの。
書きながらつくづく私って相当イヤな子だったわ・・・と思うけど、
私だって彼女と同じ問題を抱えて生き抜くのに必死だったの。
ほかの子を思いやって手助けする余裕なんてなかったわ。

それまでずっと家庭の中で親に育てられ、里子としての処世術を
身につけてなかったユカちゃんはトラブルメーカーだったの。
マイペースで、お風呂に入るのも食事を食べるのも遅いし、
空気を読めない子で里親の神経を逆なでるような言動をするし、
そのせいで里親は怒って不機嫌になるしで、ハタ迷惑な子だったわ。
おまけに里子たちは「無関心」と「不干渉」の掟の下、
たがいに相手の事情を詮索しない暗黙のルールがあったけど、
彼女はほかの里子たちに「親はなにをしてるの?」と不躾な質問をしたり、
里子に出された事情を聞きだそうとしてヒンシュクを買ったわ。

ユカちゃんが脱走したのは、よく覚えてないけど、
たぶんS宅にきて3ヶ月もたたない頃だったと思う。
脱走といっても、マリちゃんのような「計画的失踪」ではなかったわ。
ドンくさい──というか「子どもらしい子ども」だったユカちゃんのやることだから、
逃げたあとでどうするか──どこへ行くのか、住む場所は確保できるのか、
当面の生活資金はどうするか、どうやって生計を立てるか──という
具体的なプランや見通しがあるワケではなく、彼女は「ただ逃げた」の。
もしかするとユカちゃんは親もとに帰ろうとしたのかも知れないけど、
そこへたどりつくまでの交通費もなければ逃亡資金もない、協力者もいない、
まったく無謀で「子どもじみた」愚行としかいいようがなかったの。

バカみたい、逃げてどうするっていうの?なにを考えてるのかしら?──
──ユカちゃんの脱走を知ったとき、私は冷淡な感想しか持てなかったわ。
そして次第に腹立たしい気持ちがふくれあがってきたの。
おバカなユカちゃんのせいで里親が鬼のように不機嫌になり、
その怒りの矛先がおとなしくガマンしてる私たちに向けられる現実を前に
残された里子たちが腹を立てないワケがなかったわ。
そうはいっても里子たちは各自それぞれ静かに勝手に腹を立てるだけで、
おたがいに自分の気持ちを口に出して確かめあうことはなかったわね。
学校では同じ仲良しグループに属する女の子たちが
特定の子に対する怒りや反感を共有することで仲間どうしの連帯感を強め、
そのグループへの帰属意識や忠誠心を表明してたけど──それはときに
「悪口大会」や「イジメ」という陰湿な形となって表出したけど──
独立心に富んだ里子たちは、たとえ同じ屋根の下で暮らしてても、
そこに帰属意識を持たないかわりに陰湿な悪口大会もなかったの。
里子たちにとって、措置された里親宅にいるほかの里子や里親家族は
たまたま電車の同じ車両に乗り合わせた乗客どうしのような存在、
「そこにいる間だけ」「テキトーにやりすごせばいい人」だったの。

ユカちゃんはすぐに捕まったわ。
翌日、彼女は児童相談所の職員に連れられてS宅に戻ってきたの。
それから数日間、彼女は物置部屋に監禁されて過ごしたわ。
私たちは物置に近づくのも彼女と口をきくのも禁じられたから
彼女がなにを考え、どうやって過ごしていたか詳しいことはわからない。
でも、彼女が汚物の入った洗面器の中身をトイレに流して
その洗面器を浴室で洗おうとして里親に殴られる姿を見たから
監禁されてる間はトイレにも行かせてもらえなかったようね。
その次に彼女の姿を見たとき、彼女は里親に土下座してたの。
土下座して「水を飲ませてください」とお願いしてたの。
心やさしい里親は水を飲むのを許したわ──「便器の中の水」という条件でね。
彼女が便器に顔を突っ込んで水を飲む姿を、私は黙って見てたわ。
ああ、私でなくてよかった、ユカちゃんでよかった、と思いながら・・・

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コメント
  1. miyuki より:

    gladiolusさん、こんにちは。

    いつも記事をUPして下さりありがとうございます。
    本当に、本当に、腐ってますね、その里親。
    いつもながら、言葉を失ってしまいます。

    さて、また共有させて頂きたい記事がみつかりました。
    http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/091016/crm0910160000000-n1.htm

    このように、全国紙の新聞サイトでの情報発信は
    少しでも、虐待を無くすために非常にありがたいですね。

  2. gladiolus2009 より:

    miyukiさん、こんばんは。
    痛ましくも興味深い記事のご紹介ありがとうございます。
    少しずつではありますが、里親による里子への虐待が「発覚」して
    メディアに取り上げられる世の中になってきた、ということでしょうか。
    そうはいっても表沙汰になるのはまだまだ氷山の一角で、
    子どもが取り返しのつかない重傷を負った場合にかぎられますけど。
    こちらの件は近いうちに親記事にしたいと思います。

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